2004年の松中信彦氏以来、日本球界では実に18年間にわたり三冠王が誕生していませんでした。投手の球速向上や変化球の多様化、綿密なデータ分析が進んだ現代野球において「三冠王はもう二度と現れない」と囁かれていた中、その定説を覆したのが村上宗隆の令和三冠王獲得の経緯でした。
2026年、弱冠22歳の村上選手はシーズン序盤から異次元のペースで本塁打を量産。8月にはプロ野球史上初となる「5打席連続本塁打」という驚愕の快挙を成し遂げました。しかし、王貞治氏の日本人最多記録を更新する第56号本塁打を前にして、極度のプレッシャーから13試合・48打席ノーアーチという深刻なスランプに直面します。打率のタイトル争いでも中日・大島洋平選手との激しいデッドヒートが繰り広げられる中、シーズン最終戦の最終打席で放った劇的な56号ソロ本塁打によって、歴代最年少三冠王の座を自らのバットで手繰り寄せました。プレッシャーに打ち勝つメンタリティと技術の結実が、令和の球史を大きく塗り替えたのです。
視点を世界に向けると、MLBメジャーリーグ歴代三冠王の歴史もまた、極めて険しい道のりを示しています。近代野球(1901年以降)のMLBにおいて打者三冠王を達成したのはわずか10人(12回)です。1967年にカール・ヤストレムスキー氏(レッドソックス)が達成して以降、約半世紀にわたり達成者が途絶えていましたが、2012年にミゲル・カブレラ氏(タイガース)が打率.330、44本塁打、139打点をマークし、実に45年ぶりの快挙として全米を熱狂させました。世界最高峰の舞台においても、三冠王は半世紀に一度クラスの「奇跡」として位置づけられています。