三菱の発展を語る上で欠かせないのが、卓越したリーダーシップを発揮した歴代総帥の存在です。岩崎弥太郎の家系図を辿ると、単なる世襲にとどまらない、能力重視の独特な継承システムが見えてきます。
最高権力は、初代・弥太郎から弟の第2代・弥之助へ、続いて弥太郎の長男である第3代・久弥へ、そして弥之助の長男である第4代・小弥太へと、本家と分家の間でたすき掛けのように受け継がれました。この柔軟な後継体制が、ワンマン経営の弊害を防ぎ、組織の近代化を推し進めました。
なかでも岩崎久弥の功績は極めて大きく、合資会社の設立によって近代的な組織マネジメントを確立したほか、農園経営や東洋文庫の設立など文化・教育事業にも多大な足跡を残しました。
そして最後の総帥となった岩崎小弥太の経歴は極めて国際的でした。東京帝国大学を経て英ケンブリッジ大学に留学し、合理的な西洋の企業統治を修得。帰国後に第4代社長に就任すると、事業部制の解体と株式の公開を推進し、現代に通じる企業集団の骨格を完成させました。