インターネット上で頻繁に見られる「ネイティブはサランヘヨを使わない」という言説には、言語学的な事実と文化的な背景の双方が絡み合っています。結論から言えば、まったく使わないわけではなく、使う相手とシチュエーションが明確に限定されているというのが現場の真実です。
サランヘヨ使わない理由として最も大きいのは、対人関係における「言葉の距離感」です。韓国語は敬語(ジョンデッマル)とタメ口(パンマル)の境界線が日本語以上に厳格です。すでに付き合っている恋人同士や夫婦など、心理的距離が極めて近い関係性においては、丁寧語の「サランヘヨ」ではなく、タメ口である「サランヘ(사랑해)」を使うのがごく自然な会話の流れとなります。恋人から改まって「サランヘヨ」と言われると、かえって距離感やよそよそしさを感じてしまうネイティブも少なくありません。
また、韓国の恋愛文化における「愛(サラン)」という言葉の重みも関係しています。交際前のデート期間(サムの段階)や付き合いたての時期に「愛してる」と伝えるのは、相手に対して「重すぎる」「軽々しい」という印象を与えかねません。そのため、初期段階では後述する「チョアヘヨ(好きです)」が優先されます。
一方で、アイドルがファンコミュニティ(Weverseなど)やコンサート会場でファンに向かって叫ぶ場面、あるいは両親へ感謝を伝える記念日(オボイナルなど)においては、親愛と敬意を込めた「サランヘヨ」が極めて頻繁に使われています。つまり、「日常の恋人間ではパンマルが主流であり、敬意を伴う愛の表明としてサランヘヨが機能している」というのが噂の正確な構造です。