伝記映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』では、政治家としての華々しい勝利だけでなく、権力の座を退いた後の認知症との闘いや、夫デニスへの深い愛情、そしてリーダーゆえの孤独が克明に描かれました。
映画の中で彼女は、感情論ばかりを優先する風潮に対して次のように警鐘を鳴らします。
「いまの人々は、どう考えるかではなく、どう感じるかばかりを気にする。『気分はどう?』と尋ねられても困る。大切なのは何を感じているかではなく、何を考え、何を行うかだ。」
感情に流されず、論理と思考を行動の基準に据える。この冷徹とも取れる現実主義は、彼女が国家の最高責任者として下さなければならなかった重い決断の数々を支える防波堤でもありました。映画は単なる偉人伝にとどまらず、鋼の意志を持った一人の女性が生涯をかけて貫いた哲学のリアリティを伝えています。