色川武大と伊集院静の魂の師弟関係|無頼派が遺した生き方の真実

色川武大と伊集院静の魂の師弟関係|無頼派が遺した生き方の真実

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二人の関係を語る上で欠かせないのが、伊集院静氏が人生最大の暗夜にあった時期の出会いです。1985年、伊集院氏は当時27歳だった最愛の妻・夏目雅子さんと死別。深い喪失感から酒に溺れ、荒れた生活を送っていた伊集院氏の前に現れたのが、すでに文壇の重鎮として名を馳せていた色川武大氏でした。

色川氏は、打ちひしがれる伊集院氏に対して安っぽい同情や説教の言葉を一切かけませんでした。ただ一言、「旅へ出よう」と声をかけ、全国の競馬場や競輪場、麻雀の現場へと連れ出したと伝えられています。伊集院静のエッセイや自伝的小説『いねむり先生』でも生々しく描かれているように、色川氏はただ静かに隣に座り、勝負の浮沈を共に味わうことで、傷ついた若者の心を社会へと引き戻していきました。

「人は誰しも大きな悲しみを背負って生きている」という事実を、自らの傷だらけの生き様を通じて無言で教えた色川氏。その包容力に触れた伊集院氏は、後に自著で「あの人がいなければ、私は間違いなく野垂れ死んでいた」と述懐しています。二人の間に芽生えた強固な信頼関係は、言葉による教育ではなく、生きる姿勢そのものを共有することから始まったのです。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。