カウンターに並ぶ人々の素顔は、驚くほど多様で平穏だ。大手IT企業のエンジニア、広告代理店のクリエイター、医師、弁護士、アパレル関係者、そしてごく普通の会社員。20代後半から40代を中心に、自立した経済力を持つ男女が集う。彼らに共通しているのは、日常で背負っている社会的責任や重圧からの解放を求めている点だ。
パートナー同士の合意のもとで来店するカップルも少なくない。マンネリを打破したい、互いの新たな一面を発見したいといった動機から訪れ、バーカウンターでの会話を楽しみながら非日常の刺激を共有する。誰もが本名や職業を明かす義務はなく、ニックネームひとつで対等に対話できる匿名性こそが、この空間における最大の魅力として機能している。