1970年代末、あるクイズ番組のスタジオでその奇跡は起きた。伏せ字としてフリップに書かれていた「××」の記号。通常の司会者であれば「ペケペケ」あるいは単に「伏字」と読むところを、山城新伍は唇を歪ませ、いかにも意味ありげに「チョメチョメ」と発音してみせたのだ。バツ印を重ねた形状から直感的に紡ぎ出されたこのオノマトペは、瞬く間に全国の視聴者を共犯関係へと引きずり込んだ。
天才的なのは、彼自身が決して直接的な下ネタを口にしなかった点にある。あえて意味を曖昧にぼかし、下品と上品、放送コードと本音の隙間に「チョメチョメ」という架空のクッションを挟み込む。視聴者はそれぞれの脳内で勝手な妄想を膨らませ、勝手に赤面し、そして爆笑した。規制を逆手に取った高度な言語遊戯であり、生粋の映画人ならではの即興演出(アドリブ)が生んだ至高のメディアハックだったと言える。