社会的割引率4%の罠とは?見直しの真相と公共投資・気候変動の行方

社会的割引率4%の罠とは?見直しの真相と公共投資・気候変動の行方

社会的割引率4%の罠とは?見直しの真相と公共投資・気候変動の行方の真相や最新動向に迫る! わかりやすい言葉でご紹介しています。

私たちが今日手にする100万円と、20年後に手にする100万円では、その重みが異なります。将来の価値を割り引いて現在と同等の水準に換算する物差しが「割引率」であり、これを国や自治体の公共投資の評価に適用したものが「社会的割引率(Social Discount Rate: SDR)」です。

公共事業を実施する際、投じる総事業費(費用:Cost)に対して、渋滞緩和や浸水防止などの効果(便益:Benefit)がどれだけ上回るかを測る費用便益分析(B/C)が必須とされています。この際、費用は工事着手時に一括して発生するのに対し、便益は供用開始後30〜50年という極めて長い年月にわたって生じます。遠い未来の便益をそのまま合算するわけにはいかないため、現在価値への換算を行う基準として社会的割引率が不可欠な役割を担っているのです。

では、なぜ日本では4%という数値がこれほど長く使われてきたのでしょうか。発端は2004年、関係省庁による『公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針』が策定された当時に遡ります。

公式発表資料や当時の議事録を紐解くと、この4%は「民間資金調達コスト(資本の機会費用)」を基礎に算出されたものでした。当時はまだバブル崩壊後の名残があり、長期国債の利回りや民間企業の調達金利、過去の経済成長トレンドを勘案した結果、「当面の間適用する合理的な水準」として年4%が規定された経緯があります。

しかし、制定から20年以上が経過するなかで、世界経済の前提は根底から覆りました。ゼロ金利からマイナス金利政策の長期化、超低金利時代の定着によって、民間投資のハードルレートは大きく低下。実勢の長期金利が1%前後に留まるなか、官公庁の評価マニュアルだけが「4%」という高止まりの数字を頑なに使い続ける異常事態が、学界や政策担当者の間で社会的割引率の引き下げ議論として爆発したのです。

佐藤 大輔
著者

佐藤 大輔

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