ネット上の言説では「スーツ離れ=紳士服業界の破滅」といった極端な論調が目立ちますが、これは業界の全体像を見誤った誤解です。現場の詳細な動向を追うと、以下の3つの強固な需要基盤が存在していることがわかります。
第一に、冠婚葬祭・セレモニー・就職活動という「制度的オケージョン」の不変性です。就活生のリクルートスーツ需要や礼服・喪服需要は、少子化の影響を受けつつも極めて堅調であり、代替が効きにくい領域です。
第二に、BtoBユニフォーム市場および高機能テキスタイル供給の拡大です。大手紳士服メーカーは長年培った生地開発力と調達網を活かし、ホテル、警備会社、交通機関、さらには一般企業のオフィスユニフォームの受託生産を拡大しています。
第三に、超高価格帯のクラシックスタイルに対する熱狂的な回帰です。誰もがスーツを着る必要がなくなったからこそ、英国製・イタリア製の名門生地を用いた本格テーラードスーツは「嗜好性の高い趣味・ステータスシンボル」へと昇華し、高所得者層の間で単価が上昇しています。