現在、聖徳記念絵画館を取り巻く環境で最も関心を集めているのが、明治神宮外苑地区の市街地再開発事業をめぐる動向です。神宮球場や秩父宮ラグビー場の建て替え、超高層ビルの建設計画に伴い、100年にわたり育まれてきた樹木の伐採撤去や生態系への影響を巡って激しい議論が続いてきました。
報道各社や東京都、事業者側の公開情報によると、国指定重要文化財である聖徳記念絵画館の建物そのものは確実に永久保全される対象であり、解体や移転の対象ではありません。しかし、都市計画の専門家や景観保護団体が強く警鐘を鳴らしてきたのは、「青山口から絵画館へと一直線に延びるビスタ景観(遠望の眺望軸)」の質的変化です。
現在の景観は、緩やかな傾斜を描く4列のイチョウ並木の奥深くに重厚な絵画館のドームが堂々と姿を現すよう、大正期に高度な遠近法に基づいて計算し尽くされて設計されました。再開発に伴う樹木保全計画の修正や新施設の配置検討、施工プロセスの見直しが積み重ねられていますが、歴史的モニュメントである絵画館を中心に紡がれてきた緑のスカイラインをいかに将来へ継承できるかという課題は、現在も注視され続けています。
🏛️ 編集部アーカイブメモ:イチョウ並木の樹木は、絵画館に向かって背丈の低い木から高い木へと配置することで、視覚的な奥行きを強調するリバース・パースペクティブ(逆遠近法)の妙技が施されています。外苑を歩く際は、青山通り側から一歩ずつ絵画館へ近付きながら、景観設計の緻密さを直接味わってみてください。