ダグアウトの空気が変わった。就任以来、チームの意識改革を推し進める藤川球児監督は、これまでの固定観念を根底から覆す采配を見せている。関係者への独自取材で浮かび上がったのは、甲子園特有の右から左へと吹き付ける強烈な浜風を徹底的に利用した「グラウンド特化型オーダー」の存在だ。
長打力だけに依存しない。出塁率と走塁の初速を極限まで重視し、相手投手に1球たりとも息をつかせないプレッシャーをかけ続ける。下位打線にも機動力のある若手を抜擢し、どこからでもエンドランを仕掛けるアグレッシブな陣形を敷く。相手バッテリーの配球傾向を完全に丸裸にした緻密なスコア分析が、電光石火の先制点へと直結しているのだ。
「甲子園の1点は、他球場の3点に匹敵する」。藤川監督が選手たちに繰り返し説くこの哲学が、グラウンド上の規律として浸透している。守備シフトのミリ単位のポジショニングから継投のタイミングに至るまで、指揮官の研ぎ澄まされた勝負勘がチームを力強く牽引している。