武道館の歴史を語る上で欠かせない存在が、ソロアーティストとして最多公演回数を更新し続ける矢沢永吉だ。彼が築き上げた「武道館=超満員の熱狂」というブランディングは、長らく音楽シーンのゴールドスタンダードとして君臨してきた。あのマイクスタンドを回すパフォーマンスと地鳴りのような歓声は、チケット即日完売が前提の熱量に支えられていた。
だが現代の音楽興行において、かつてのような「出せば売れる」神話は崩壊しつつある。J-POPシーンの多様化に伴い、リスナーの嗜好は細分化。かつてのように国民的スターが一手に動員を集める時代から、特定のコミュニティに支えられた中規模アーティストが乱立する時代へとシフトした。その結果、1万人規模の会場を埋め切るハードルは以前よりも格段に跳ね上がっている。