語尾を伸ばす母音の強調、独特のタメとリズム感、そして巻き舌を交えた予測不能な抑揚――これらはファンの間で「若本節」と称され、モノマネの対象としても親しまれています。しかし、このスタイルは一朝一夕で生まれたものではありません。
若本はキャリア初期の1970年代から1980年代にかけて、洋画の吹き替えやハードボイルド作品でクールかつ知的な二枚目・正統派の悪役を多く演じていました。転機となったのは50代を迎えた頃です。従来の枠組みにとらわれない表現を模索する中で、古武術や呼吸法を取り入れ、言葉を音として捉えてうねりを生み出す独自のアプローチを確立していきました。
計算された「間」と強烈なアタック(音の立ち上がり)は、セリフに音楽的なグルーヴ感を与えています。脚本の意図を汲み取りつつも、視聴者の耳を釘付けにするフックを仕掛ける職人技こそが、若本節の本質と言えます。