山寺宏一の残してきた実績の中でも、特に語り草となっているのが『それいけ!アンパンマン』における驚異的な役数です。初期から担当する「めいけんチーズ」や「カバお」、「かまめしどん」に加え、故・増岡弘さんからバトンを受け継いだ「ジャムおじさん」など、同一エピソード内で複数のメインキャラクターを同時に演じ分ける離れ業を日常的に披露しています。
公式記録や関係者の証言によると、これまでに同作で担当した名無しキャラクターやゲスト怪獣を含めると、演じた役数は通算40〜50役以上にのぼるとされます。1つのシーンで「自分が演じるキャラ同士が会話する」という極限状態であっても、声の被りや違和感を一切生じさせない職人技は、海外のアニメーション関係者からも絶賛の的となっています。
さらに、ディズニー作品における吹き替え実績も世界最高峰の評価を得ています。とりわけ『アラジン』のジーニー役は、原語版を担当したロビン・ウィリアムズの超高速マシンガントークとアドリブを完璧に日本語へローカライズした不朽の名演として知られています。本国の厳しいオーディションを一発でパスした『ドナルドダック』独特のアヒル声や、『リロ・アンド・スティッチ』のスティッチ、『美女と野獣』の野獣役など、同一人物が担当しているとは到底思えない多彩なラインナップを誇ります。
アニメ分野では『カウボーイビバップ』のスパイク・スピーゲル、『新世紀エヴァンゲリオン』の加持リョウジ、『ルパン三世』の銭形警部(2代目)など、色気と哀愁を兼ね備えた大人の男性像でも観客を魅了。実写洋画ではエディ・マーフィ、ジム・キャリー、ウィル・スミス、ブラッド・ピットといったハリウッドを代表するスターたちの専属吹き替えとして、日本のお茶の間に洋画の魅力を届け続けてきました。