なぜこのシリーズは、これほどまでに観る者の心を抉り、惹きつけてやまないのか。その根底には、原作者・真鍋昌平による徹底したフィールドワークがある。
裏社会の住人、多重債務者、風俗嬢、ギャンブル依存症患者——丹念な取材から紡ぎ出された原作の空気感を、企画・監督・プロデュースを手掛けた山口雅俊が見事な手腕で映像へと昇華させた。過度な感情移入を拒む乾いたカメラワーク、静寂のなかに響く咀嚼音、そして救いのない現実をありのままに突きつける冷徹なストーリーテリング。安易なカタルシスに逃げない演出は、国内のクライムサスペンスにおいて孤高の領域に達している。
単なる悪党礼賛ではない。社会の底辺で蠢く人々の弱さと業を浮き彫りにする本格派ピカレスクとして、本作はエンターテインメントの枠組みを大きく超え出ている。