日本人の平均睡眠時間は主要先進国の中でも極めて短いことで知られていますが、皮肉なことに、睡眠の謎を解き明かす学術研究の分野では、世界をリードする著名な日本人研究者が数々の金字塔を打ち立てています。
その筆頭が、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)を率いる柳沢正史教授です。柳沢教授は1998年、睡眠と覚醒をコントロールする脳内神経ペプチド「オレキシン」を発見しました。この物質が不足すると、突然強烈な眠気に襲われる難病「ナルコレプシー」を引き起こすことを解明。この大発見は、現在世界中で処方されているオレキシン受容体拮抗薬(新しい作用機序の睡眠薬)の開発へと直結し、2026年には「生命科学ブレークスルー賞」を受賞するなど、ノーベル賞の最有力候補として国際的な注目を集め続けています。
一方、臨床と生活行動の橋渡し役として多大な影響を与えたのが、スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所で所長を務めた西野精治教授です。ベストセラーとなった著書を通じて「睡眠負債」という言葉を日本社会に定着させ、眠り始めの「最初の90分(ノンレム睡眠)」が成長ホルモンの分泌や自律神経の回復において決定的な役割を果たすことを科学的に実証しました。