過剰な観光開発や保全不足が放置された場合、国際社会から突きつけられるのが危機遺産リストへの登録という最後通牒だ。これは世界遺産としての価値が消滅しかけていることを意味し、自治体にとっては絶大なイメージダウンとなる。かつて英国のリヴァプールが登録抹消に追い込まれた歴史は記憶に新しい。
ユネスコのオードレ・アズレ事務局長も、無計画な観光利用に対して度々警鐘を鳴らしてきた。「保護なき利用は自滅への道だ」という呼びかけは、観光収入に依存する国々への痛烈な批判でもある。しかし、一度肥大化した過剰な集客構造を縮小させるのは容易ではない。危機リスト入りの恐怖と隣り合わせで綱渡りを続ける現場の疲弊はピークに達している。