ジャンルを選ばない役幅の広さも、彼を語るうえで欠かせない。家族の崩壊と再生を静謐に描いたヒューマンドラマでは、言葉にならない後悔を抱える男を抑制の効いた佇まいで演じきり、観客の涙を誘った。一方で、息もつかせぬ展開が連続するサスペンス映画では、底知れぬ狂気や葛藤を瞳の奥に宿らせ、物語のスリルを極限まで引き上げる。
特筆すべきは、善悪のグラデーションを表現する巧みさだ。完全な善人でも完全な悪人でもない、現実の人間が抱える曖昧さや弱さを、彼は一切の自己弁護なしに演じる。監督の演出意図を深く咀嚼しつつ、現場で共演者の呼吸を瞬時に拾い上げるセッション能力の高さが、どのジャンルにおいても作品の芯を太くさせている。