経済記事の見出しに「株価1万円突破」と躍ると、その企業が日本を代表する巨大企業であるかのような印象を受けます。しかし、金融工学や株式実務において、単独の株価は何ら企業の全体規模を表していません。結論から言えば、時価総額と株価の違いを理解するカギは、ケーキを何等分に切り分けたかという比喩に集約されます。
仮に1株が5万円の企業Aと、1株が1,000円の企業Bが存在したとします。一見すると企業Aの方が圧倒的に価値が高く見えます。しかし、企業Aの発行済株式総数が10万株であれば時価総額は50億円に過ぎません。対して企業Bが1億株を発行していれば、時価総額は1,000億円に達します。つまり、企業としての市場価値は企業Bの方が20倍も大きいのです。
株式市場では、個人投資家が買いやすい単元価格にするための「株式分割」や、逆に株数を減らす「株式併合」が日常的に行われます。近年では新NISAの普及に伴い、最低投資金額を引き下げる目的で1株を5分割や10分割する企業が相次ぎました。これにより株価は5分の1や10分の1へと見かけ上急落しますが、発行済株式総数が同倍率で増加するため、企業の器としての時価総額は1円も変わりません。株価とは単なる「1ピースの値段」であり、企業全体の価格を表すメーターが時価総額なのです。