是枝裕和監督といえば、家族の絆や人々の微妙な心理描写を描かせたら右に出る者はいない。一方で、食をテーマにした作品で独自の地位を築き上げてきた松重豊。この二つの個性が交差したとき、従来の枠組みに収まらない至高のヒューマンドラマが誕生する。
物語の舞台は、都心の片隅にひっそりと佇む一軒の食堂。訪れる客たちは、それぞれに抱えた悩みや孤独、ささやかな喜びを抱えている。店主がそっと差し出す一皿の料理が、傷ついた心を解きほぐしていく。単なる空腹を満たすためだけではない、魂を救う食卓の物語。二人の巧みな表現力が、観る者の心深くに染み渡る。