転機となったのは、名匠たちとの出会いだ。カンヌ国際映画祭の常連である是枝裕和監督の現場で見せた佇まいは、関係者の間でも語り草になっている。作為的な感情表現を排し、ただそこに存在することで日常の機微を立ち上がらせる芝居は、映画ファンが求めるドキュメンタリー的リアリズムと完璧に共鳴した。
「彼女は言葉の裏にある沈黙を演じられる」。巨匠をしてそう言わしめた才能は、ただ綺麗な台詞回しをするだけの俳優とは一線を画している。登場人物の哀歓や孤独を己の肉体に宿らせ、何気ない日常の動作の中に鋭利な刃物のような緊張感を潜ませる表現力は圧巻だ。