1985年1月28日の深夜、ロサンゼルスのA&Mスタジオで行われた『We Are The World』のボーカル録音。歴史的プロジェクトUSAフォー・アフリカの参加アーティストたちが一堂に会する中、シンディ・ローパーのソロパート録音時に予期せぬトラブルが発生しました。
コントロールルームで音をチェックしていたレコーディングエンジニアたちが、シンディが歌うたびにマイクから混入する謎の「カチャカチャ」「チリチリ」という高周波ノイズに気づいたのです。機材の接触不良やスタジオ内の電磁ノイズを疑い、スタッフ全員が原因究明に追われる緊迫した空気が漂いました。
その異音の正体は、シンディが身につけていた大量の重ねづけブレスレットや大ぶりのイヤリング、金属製ネックレスでした。パンキッシュで個性的なファッションを貫いていた彼女のアクセサリー類が、全身全霊で歌う激しい身体の動きに合わせて擦れ合い、高感度マイクに音を拾われていたのです。
プロデューサーのクインシー・ジョーンズから優しく指摘を受けたシンディは、身につけていたアクセサリーをすべて外し、再びマイクの前に立ちました。長時間の拘束と疲労、錚々たる大先輩たちに囲まれた極度の緊張感の中、ノイズから解放された彼女が放った次のテイクこそが、あの世界中を鳥肌立たせた魂の絶唱でした。