馬賊の暖簾をくぐる来訪者の約半数が迷わず注文するのが「担々麺」です。運ばれてきた丼からは、炒り胡麻の香ばしいアロマと自家製辣油の刺激的な香気が立ち上ります。一般的な担々麺と一線を画すのは、スープのベースに宿る奥深いコクと、手打ち麺がもたらす唯一無二の食感のコントラストです。
スープを口に含むと、芝麻醤(チーマージャン)の濃厚でまろやかな甘みが広がり、すぐさまキレのある辛味と花椒の微かな痺れが追いかけてきます。特筆すべきは、太さにランダムな揺らぎがある手打ち麺の存在です。ある部分は極太のうどんのようにモッチリと強いコシを誇り、別の部分は薄く平たいきしめんのように滑らかに喉を通る。この不規則なテクスチャーが濃厚なスープを力強く巻き込み、ひと口ごとに異なる口当たりを演出します。具材の肉味噌をスープに溶かし込みながら食べ進めれば、最後の一滴までレンゲを止めることができません。
一方で、麺そのものの純粋な生命力を堪能したい食通たちから熱狂的な支持を集めるのが「つけ麺」です。茹で上がった手打ち麺を冷水でキュッと締め上げることにより、小麦のデンプン質が引き締まり、担々麺以上の暴力的なまでの弾力とコシが出現します。甘酸っぱくどこかノスタルジックな醤油ベースのつけ汁は、冷やされた太麺の存在感を最大限に引き立てる引き算の設計。麺を箸で持ち上げ、つけ汁に半分ほど浸して勢いよくすすり込むと、唇を跳ね上げるようなチュルチュルとした快感が口内を満たします。夏場はもちろんのこと、年中を通して麺好きが「つけ麺」を指名買いする理由がここにあります。