『バンパイヤ』の大成功により、一躍スターダムにのし上がった水谷豊。しかし、その輝かしいスポットライトの裏で、本人の心の中には深い違和感と葛藤が渦巻いていました。周囲から「トッペイ」ともてはやされる一方、学校生活では普通の中高生としての居場所を失いかけていたのです。
「このまま周りに流されて俳優を続けていいのか」「自分にはもっと別の生き方があるのではないか」――。そう思い悩んだ水谷豊は、高校卒業を控えた多感な時期に、周囲の引き止めを振り切って劇団ひまわりを退団し、芸能活動を完全に休止する決断を下しました。
休業期間中、彼は大学進学を目指して予備校に通い、浪人生活を送ります。生活費を稼ぐために様々なアルバイトを経験し、世間の荒波と孤独を真正面から味わいました。しかし、大学受験は思うような結果が出ず、挫折を味わうことになります。失意の底で自分自身を徹底的に見つめ直したとき、心に浮かび上がってきたのは「やはり自分には芝居しかない」という演技への純粋な情熱でした。この一度立ち止まり、普通の社会人としての苦杯を舐めた経験が、のちの泥臭くも説得力のある演技の糧となったのです。