枕による完治は望めないものの、正しいアライメント(骨格の配列)を整えることで、気道の狭小化を最小限に抑える「補助的役割」は確かに存在します。その成否を握る絶対的な基準が「頸椎の自然なカーブを維持できる高さ」と「横向き寝(側臥位)の維持能力」です。
人間が真っ直ぐ立っているとき、首の骨(頸椎)は緩やかなS字状のカーブを描いて前方に湾曲しています。敷布団に横たわった際、この立ち姿勢のカーブをそのまま再現できる高さが理想的な気道確保のポジションです。敷布団と後頭部から首筋にかけてできる隙間を過不足なく埋め、視線が真上よりも約5度から15度ほど足元側へ向く傾斜角が、喉の奥を最も広く保つ黄金比率とされています。
そして、閉塞性無呼吸に対して最も劇的な変化をもたらすのが「横向き寝枕」の効果です。日本睡眠学会等の研究報告でも明らかなように、仰向けから横向き寝へと体位を変換するだけで、重力による舌根沈下が側方へ逃れ、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)が約30%〜50%低減する患者群が多数存在します。これを医学用語で「体位依存性睡眠時無呼吸(POSA)」と呼びます。
横向き寝を安定させる枕には、仰向け寝用の枕とは異なる特殊な設計が求められます。肩幅の厚みがある分、枕の両サイドには約8〜12cm程度の十分な高さが必要であり、耳を圧迫しないくぼみや、寝返りを打っても体幹が崩れないホールド感が欠かせません。抱き枕を併用して背部を支え、就寝中の無意識な仰向け寝を防ぐアプローチは、軽度無呼吸の緩和策として臨床現場でも推奨されています。