水素の生体利用を考える上で混同してはならないのが、医療分野で研究が進む「水素吸入」と市販の「水素水飲料」の摂取効率の圧倒的な違いです。慶應義塾大学病院をはじめとする高度医療機関では、心停止後症候群などを対象とした先進医療B(※現在は終了し保険適用に向けた研究へ移行)において、高濃度の水素ガス吸入療法が研究されてきました。
両者の決定的な差は「体内に取り込める水素の絶対量」と「到達経路」です。水素水の場合、1気圧下での水に対する水素の飽和濃度は約1.6ppm(mg/L)程度にとどまり、500mlを1本飲んだとしても摂取できる水素ガスはわずか0.8mg前後にすぎません。しかも胃腸から吸収される前に呼気として大半が体外へ排出されます。一方、水素吸入療法では数パーセント濃度の水素ガスを肺から直接血液循環へと送り込み、短時間で桁違いの分子量を全身の組織へ行き渡らせます。「病院で研究されているから水素水も効くはずだ」という論理のすり替えには注意が必要です。