昨日まで健康だった人が、何の前触れもなく激しい水下痢に襲われる背景には、外因性の病原体による急性腸炎症状が強く関与しています。代表格がウイルスや細菌を原因とする感染性胃腸炎です。
冬場から春先にかけて猛威を振るうウイルス性胃腸炎の筆頭であるノロウイルス症状では、吐き気や激しい嘔吐とともに、黄色から薄い茶色を呈する大量の水様便が突発的に出現します。ウイルスが小腸上皮の細胞を破壊し、吸収不全と腸液分泌を急激に引き起こすため、わずか数時間で数十回ものトイレ往復を余儀なくされるケースも珍しくありません。同様に乳幼児に多いロタウイルスでは「白色〜クリーム色の水様便」が特徴的です。
一方、夏場を中心に多発する細菌性の水様便 食中毒も見過ごせません。加熱不十分な鶏肉などを原因とするカンピロバクター、生鮮魚介類に潜む腸炎ビブリオ、病原性大腸菌(O157や毒素原性大腸菌など)は、腸管粘膜に直接侵入するか、あるいは産生されたエンテロトキシン(腸管毒)が大腸・小腸の細胞内シグナルを刺激し、大量の水分とナトリウムを腸腔内へ流出させます。この場合、38度を超える高熱や激しい腹痛、時には血便を伴う点が特徴です。
臨床現場の医師からは「単なるお腹の風邪と甘く見て出勤・登校し、職場のトイレで意識を失い救急搬送される患者が毎年後を絶たない」という警鐘が鳴らされています。突然の水様便は、体が毒素や病原微生物を緊急排出しようとする防衛反応そのものであることを認識しなければなりません。