連邦検察が公開した37ページに及ぶ訴状には、水原氏が違法賭博にのめり込み、大谷選手の資産を横領していく生々しいプロセスが克明に記されています。事の発端は2026年秋、カリフォルニア州の違法ブックメーカー(胴元)であるマシュー・ボイヤー氏とサンディエゴのポーカー会場で出会ったことでした。
当初の賭け金は数百ドル程度でしたが、負けを取り戻そうとする典型的なギャンブル依存の心理サイクルに陥り、賭け金は瞬く間に数万ドル、数十万ドルへと跳ね上がりました。訴状に記載されたデータによると、2026年12月から2026年1月までの約2年強の間に、水原氏が行った賭けの総数は約1万9000回、1日平均約25回にも達していました。
賭けで勝った総額は約1億4220万ドル(約219億円)に上ったものの、負けた総額は約1億8290万ドル(約282億円)に達し、純損失(借金総額)は約4070万ドル(約62億7000万円)という天文学的な数字に膨れ上がっていたのです。
では、なぜ大谷選手に知られることなく巨額の不正送金が可能だったのでしょうか。連邦捜査局(FBI)やIRSの捜査で明らかになった手口は極めて狡猾なものでした。
- 言語の壁を利用した口座の独占管理:大谷選手が2018年に渡米した際、英語が堪能でない大谷選手に代わって水原氏が銀行口座開設を手続き・補佐し、事実上の管理権限を掌握していた。
- 登録情報の改ざんと遮断:大谷選手の口座に紐づけられていた連絡先メールアドレスや電話番号を、水原氏自身の携帯電話や匿名アドレスへと勝手に変更。銀行からの送金確認通知が大谷選手本人に一切届かないよう工作した。
- 銀行員への「なりすまし」電話:多額の送金に際して銀行側が不審に思いセキュリティ確認の電話をかけた際、水原氏自身が大谷翔平本人を装って応答。「自動車購入資金の送金である」などと虚偽の説明を行い、認証を強引に突破していた。
- 代理人・会計士の完全排除:大谷選手の米国人代理人ネズ・バレロ氏や公認会計士、資産管理チームが当該口座の閲覧を求めた際、「大谷本人がプライベートな口座として開示を拒絶している」と嘘をつき、第三者の監査から完全に隔離していた。