日本小児内分泌学会および医学的な標準見解によると、思春期の年齢は一般的に10歳前後から18歳頃までの約8〜10年間を指します。この期間は、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌され始め、下垂体を経て性腺(精巣・卵巣)を刺激することで幕を開けます。
思春期における心身の変化は、単に背が伸びるといった次元にとどまりません。ホルモンバランスと情緒不安定は直結しており、男子ではテストステロン、女子ではエストロゲンの血中濃度が児童期の数倍から十数倍へと爆発的に跳ね上がります。この内分泌系の激震に対して、自律神経や脳の受容体が適応しきれず、原因不明の倦怠感、立ちくらみ、急な気分の落ち込みや怒りが引き起こされます。
さらに注目すべきは脳の発達段階です。恐怖や怒り、衝動を司る「扁桃体」が先行して活発化するのに対し、感情を論理的に抑制し長期的な結果を予測する「前頭前野」の完成は20歳を過ぎてからになります。つまり、高性能なスポーツカーのエンジンを搭載したまま、ブレーキの性能が追いついていない状態こそが、思春期の脳内で起きている物理的な真実です。