日本の銘木といえば古くからヒノキやケヤキが筆頭に挙げられてきたが、キッチンという現代的な舞台で圧倒的な主役感を放つのは間違いなく栃の木だ。製材したばかりの白肌から、時間をかけて深みのある黄金色へと移ろうトーンの美しさは、他の広葉樹の追随を許さない。
とりわけ愛好家を惹きつけてやまないのが、光の当たる角度によって波のように揺らめく「縮み杢(リップルマーク)」である。広葉樹専門の熟練木工職人はこう証言する。「栃は幹が太く育つ過程でねじれや強い圧力を受ける。その試練が生み出す繊維のうねりが、まるで最高級の絹織物のような乱反射を生む。料理を盛り付けた一枚の皿を置くだけで、劇場のスポットライトを浴びたように映えるのはこの木だけだ」。