近年の手口で最も警戒すべきは、静止画にとどまらない映像の偽造である。ディープフェイク技術の民主化により、顔写真を数枚学習させるだけで、ビデオ通話越しにリアルタイムで表情を動かすことが可能になった。Instagramなどの公開アカウントから無断収集された写真が、詐欺師の「仮面」として使われている。
「写真だけでなく、ビデオ通話で顔を確認したから本物に違いない」という過去の安全神話は完全に崩壊した。わずか数秒間の通話であっても、相手はディープフェイクで生成された偽りの笑顔を浮かべ、通信障害を装って回線を切断する。それだけで信用の担保としては十分機能してしまう。
この手口は、国境を越えた組織的な特殊詐欺グループによって分業制で運用されている。プロファイル作成、メッセージ送信、通話担当、資金洗浄――それぞれの専門部隊が連携し、被害者を心理的袋小路へと追い込んでいく。