球場の外では一時的に雨が弱まる瞬間もあった。だが、グラウンド内部の状況は深刻だった。阪神甲子園球場が誇る「黒土」は抜群の吸水性能を持つことで知られるが、上空に停滞した雨雲から注ぎ込んだ水量は限界を超えていた。特にピッチャーマウンド周辺とベースライン付近の足場が著しくぬかるみ、スパイクが利かない状態に陥っていたのだ。
NPB(日本野球機構)の審判団と球場管理スタッフが何度も現場のグラウンドに立ち、慎重に状態を点検した。その結果、このままプレイボールをかければ滑って足首や膝を痛める危険性が極めて高いと判断された。雨天中止の決断の裏には、選手のパフォーマンス以前に「安全の確保」というプロ野球興行における絶対的なルールが存在していた。