2026年春、都内の古い民家から見つかった1本のオープンリールテープ。そこには、1960年の秋頃に録音されたとみられる、プライベートな会話が残されていた。ノイズの向こうから聞こえるのは、少し照れくさそうに笑う赤木の低い声と、それを優しく包み込むような美輪の艶やかな声だ。
「僕には、自分が演じている男がどうしても嘘っぽく見えてしまうんだ」。そう吐露する赤木に対し、美輪は「それでいいのよ。嘘を本物にするのが私たちの仕事じゃない」と諭すように語りかけている。この数分のやり取りだけで、二人の精神的な距離の近さが十分に伝わってくる。