保護されるはずの現場従事者が一斉に反対運動を展開した理由は、この法律が現場の経済循環と制作実務を完全に麻痺させたからです。現場が直面する具体的なデメリットは主に3点に集約されます。
第1に、「公開まで4ヶ月」ルールによる出演料・印税の支払い遅延とキャリアプランの崩壊です。制作からリリースまでに最短でも5〜6ヶ月以上を要するため、出演者がギャランティや売上ロイヤルティを迅速に受け取ることが困難になりました。特に専属契約を結ばない単体女優や企画単体女優は、活動の資金繰りが圧迫され、急な体調不良や生活設計の変化に対応できない構造的リスクを背負わされることになりました。
第2に、「公表後いつでも無条件で契約解除可能」という規定に伴う制作側の過度なリスクヘッジです。制作会社やメーカー側は、数百万円の制作費や宣伝費を投じた作品が後から一方的に販売停止になるリスクを恐れ、新規出演者の起用や大胆な企画への投資を極端に抑制しました。結果として、新人女優の採用枠は大幅に絞り込まれ、継続的な出演オファーが激減したのです。
第3に、男優、カメラマン、編集スタッフ、メイクなど周辺従事者への経済的打撃です。撮影本数そのものが半減したことで、日給・歩合制で生計を立てていた技術スタッフの職が消失しました。業界団体の関係者取材によると、「制作本数の落ち込みによって現場スタッフの離職が相次ぎ、日本のアダルト映像産業が長年培ってきた衛生管理や人権保護のノウハウすら散逸しかねない」という悲痛な声が上がっています。