かつて90年代の伝説的シットコム『Friends (テレビドラマ)』をNetflixで観返してみると、登場人物たちが使う言葉のトーンには、まだ楽天的な「可能性の揺らぎ」が残っていた。皮肉屋のチャンドラーが放つジョークの中にすら、どこか相手に歩み寄る余白があった。
2010年代初頭に世界中で大ヒットしたCarly Rae Jepsenの代表曲『Call Me Maybe』でも、タイトルにある通り「もしかしたら電話してね」という淡い期待や可愛らしい躊躇いが表現されていた。しかし、わずか十数年の間に、この言葉が帯びる重力は「ポジティブな期待」から「ディフェンシブな拒絶」へと大きくシフトした。ポップカルチャーの変遷を辿るだけでも、言葉が時代の空気感を吸い込んで変質していく様がはっきりと見えてくる。