ファンの間では広く知られているが、主人公・工藤新一の誕生日が5月4日に設定されている背景には、ミステリー史における決定的な事件が横たわっている。敬愛する名探偵シャーロック・ホームズが、宿敵ジェームズ・モリアーティ教授とともにスイスのライヘンバッハの滝へと消えたとされる日――1891年5月4日だ。
青山剛昌氏はこの「ホームズの命日(のちの生還劇へと続く転換点)」をあえて主人公の誕生日に選んだ。死と再生。毒薬APTX4869によって身体を縮められ、高校生探偵から江戸川コナンへと姿を変えた主人公の宿命をこれほど鮮烈に予見した日付が他にあるだろうか。公式設定に仕込まれたこの意図的な符合は、物語の根底に流れるサスペンスの深さを静かに物語っている。