西洋で生まれた「グロテスクで冷酷な侵略者」としてのタコ型火星人は、日本に輸入される過程で独自の変容を遂げました。その変遷を決定づけたのが、昭和の漫画・アニメカルチャーです。
日本では古くからタコを食用として親しみ、タコ入道や民話のキャラクターとしてユーモラスに捉える土壌がありました。明治から大正にかけてウェルズの『宇宙戦争』が翻訳・紹介された際も、西洋のような絶対的な嫌悪感ではなく、どこか親しみやすい奇妙さとして受け入れられる傾向が見られました。
戦後、手塚治虫をはじめとする巨匠たちがSF作品を描く中で、火星人は「頭が丸く、手足がうねうねしており、口先がタコのように尖った愛嬌のある姿」へと記号化されていきます。さらに藤子・F・不二雄作品や『宇宙少年ソラン』『ウルトラセブン』といった昭和特撮・アニメを通じて、「全身が赤色」「吸盤付きの足」「すぼめたタコ口」という日本独自のお決まりパターンが確立されました。
西洋における「恐怖の侵略者」から、日本における「親しみやすい異星人アイコン」へのシフトは、日本のポップカルチャーが持つ卓越したデフォルメ能力と、食文化に根ざした親近感の融合によるものです。