『探偵物語』を語る上で避けて通れないのが、全27話のフィナーレを飾った最終回「夜汽車で来たあいつ」のラストシーンです。事件を解決し、いつものように軽やかに街を歩いていた工藤俊作が、すれ違いざまの暴漢によって突然ナイフで刺されてしまうという、あまりにも唐突で残酷な結末でした。
なぜ工藤ちゃんは刺されなければならなかったのか――。この結末には、松田優作自身の強い表現者としての意志が反映されていたと伝えられています。
当時、工藤俊作というキャラクターは大ブームとなり、松田優作=工藤ちゃんというパブリックイメージが固定化しつつありました。優作は自身が作り上げた人気キャラクターに安住することを極度に嫌い、ドラマの続編や安易なシリーズ化を断ち切るために、自らの手で「工藤俊作の死」を描くことを選んだとされています。
また、ハードボイルドの本質とは「どれほど強く魅力的な男であっても、日常の不条理な暴力の前にあっけなく倒れることがある」というリアリズムでもあります。エンディング曲「Lonely Man」が流れる中、傷口を押さえながら雨の街へと消えていく工藤俊作の後ろ姿は、永遠の伝説としてファンの胸に焼き付いています。