この2つの歴史を紐解くと、起源は全く異なるルートを辿っていることがわかる。唐揚げの「唐」という文字が示す通り、そのルーツは中国(唐代)から伝わった精進料理にあるとされる。ただし、当時の「唐揚げ(からあげ/とうあげ)」は豆腐などを揚げたもので、現代の肉を揚げるスタイルとは大きく異なっていた。現代の鶏唐揚げが普及したのは、戦後の食糧難の時代に養鶏場が急増したことがきっかけだ。
一方の竜田揚げは、日本独自の文化から生まれた。前述の通り、百人一首にも詠まれた竜田川の紅葉がモチーフである。また、旧日本海軍の軽巡洋艦「竜田」の司厨長が、小麦粉が不足していたために片栗粉を使って唐揚げを作ったところ、隊員たちに大好評となり、それが「竜田揚げ」として広まったという説も根強く残っている。歴史ロマンが詰まったこのエピソードは、今も多くの食通を魅了してやまない。