時計の針を少し戻そう。2013年、コンビ「ウーマンラッシュアワー」として『THE MANZAI』の頂点に立ったとき、彼の前には黄金色のキャリアが広がっていた。吉本興業の強力なバックアップのもと、連日のようにバラエティ番組に引っぱりだことなり、お茶の間の人気者としてのポジションを確立したかに見えた。
だが、提示された台本通りにリアクションを取り、雛壇で空気を読むだけの毎日は、彼の心をゆっくりと摩耗させていった。決められた枠組みの中でしか笑いを作れない環境に対する苛立ち。もっと切実で、もっと生々しい「個人の言葉」を発したいという衝動。長年所属した吉本興業を離れ、渡米するという決断は、彼にとって芸能界での生き残りではなく、表現者として息を吹き返すための必然的な選択だった。