西洋美術界における『蛸と海女』への熱狂は、19世紀末のジャポニスム期にまで遡ります。フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンや画家パブロ・ピカソをはじめとする巨匠たちが北斎の春画を密かに収集し、その大胆不敵な造形感覚に衝撃を受けたと伝えられています。
そして2013年、ロンドンの大英博物館で開催された特別展「春画:日本美術における性とたのしみ(Shunga: sex and pleasure in Japanese art)」において、本作は展覧会の象徴的存在として世界中のメディアで大々的に報道されました。来館者数は約9万人を記録し、「グロテスクとエロティシズムの完璧な融合」「女性の自発的な快楽を肯定的に描いた奇跡の作品」として絶賛を浴びました。
タブー視されがちだった春画を、人類が到達した高度なファインアートとして世界に再認識させた立役者こそが、『蛸と海女』であったと言っても過言ではありません。