市立福山の野球部が置かれた環境は、お世辞にも「恵まれている」とは言えない。中高一貫校である同校では、グラウンドを他の部活動や中学生と共有しなければならず、高校野球部が全面を使って練習できる時間は1日わずか90分程度に限られている。
長時間の打撃練習や泥まみれのノックに頼る従来の強化法は、この学校では物理的に不可能だ。そこでチームが導入したのが、徹底的に「時間あたりの練習強度」を高めるメソッドだった。1分単位で綿密に区切られたメニュー、球速や回転数を即座に可視化するトラッキングカメラの導入、そして選手自身が日々の課題を言語化して共有するミーティング。限られた時間を研ぎ澄ますことで、彼らは私立強豪に劣らない実戦感覚を養ってきた。