親権者は未成年者の法定代理人として、子どもの財産を管理し契約を代理する包括的な権限を持っています(民法824条)。しかし、遺産分割協議の場において、この原則は完全に停止します。その根拠となるのが、民法860条(旧826条)が定める「利益相反行為の禁止」です。
遺産というパイは総量が決まっています。親が自分の取り分を多くすれば、必然的に子どもの取り分は減り、逆に子どもに多く配分すれば親の取り分が減るという構造的対立が不可避に発生します。たとえ親が「すべて子どもの将来の教育費や生活費のために使い、私利私欲のためではない」と心から誓っていたとしても、裁判所や法律は内面的な動機を評価しません。外形的に親の利益と子の不利益が生じ得る構造である以上、親が子を代理することは法律上無効とみなされます。
実務現場の相談員によると、「自分が産み育てている子どもの財産分けを、なぜ赤の他人に指図されなければならないのか」と窓口で憤る保護者は依然として多いといいます。しかし、過去の判例や社会問題の歴史を振り返れば、親の事業失敗や再婚、あるいは浪費によって子どもの固有財産が侵奪されたケースは枚挙にいとまがありません。特別代理人制度は、自力で権利を主張できない未成年者を守るための絶対的な防壁として設計されています。