軍法会議所調査部に所属していたマース・ヒューズ中佐は、錬金術師ではない一般将校でありながら、極めて卓越した情報分析力と洞察力を備えていました。鋼の錬金術師におけるヒューズの死亡理由の核心は、国家錬金術師や軍上層部の誰もが点としてしか捉えていなかった過去の流血事件を線として結びつけ、アメストリス建国の裏に隠された「国土錬成陣」の真実に単独で到達してしまった点にあります。
彼が真相に気づいた決定的なきっかけは、エドワード・エルリックたちがリオールで直面した暴動や第五研究所の調査記録、そしてアメストリスが過去数百年にわたって領土を拡大してきた歴史の照合でした。ヒューズは中央司令部の資料室で古い地図を広げ、過去に起きた大規模な虐殺や内乱の発生地をプロットしていきました。
イシュヴァール殲滅戦をはじめ、リヴィエール流血事件、キャメロン暴動といった大規模な血が流れたポイントを地図上で結ぶと、国全体を囲む巨大な円と、錬成陣を描くための「血の紋章(刻印)」が浮かび上がります。アメストリスという国家そのものが、数百万の国民を賢者の石の材料として犠牲にするための「巨大な錬成陣」として設計されていた事実を暴いた瞬間、彼は世界の命運を左右する最重要危険人物として軍上層部の黒幕(ホムンクルス勢力)にマークされることとなりました。