「天国に一番近い島」とは、オーストラリアの東方約1,200キロメートル、南太平洋に浮かぶフランスの海外領土ニューカレドニア(Nouvelle-Calédonie)を指します。日本からは成田国際空港からの直行便で約8時間半の距離に位置し、世界最大規模の二重堡礁(ユネスコ世界自然遺産登録)に囲まれた美しい島々で構成されています。
この詩的な呼び名は、現地の先住民族カナックの伝承や公的な観光キャッチコピーから生まれたものではありません。名づけ親は、日本の女性作家・森村桂(もりむら かつら)氏です。1966年に発表された彼女の自伝的小説・旅行記『天国に一番近い島』がすべての発端となりました。
森村氏の著書や当時の回想録によると、彼女の父・森村豊明氏が生前に語り聞かせた「南の海には、神様が住む天国に一番近い島がある」という言葉が旅の原点でした。父を亡くした失意の中、単身で貨客船に乗り込み、苦難の末に辿り着いたニューカレドニア・ウベア島のエメラルドブルーの海に心を打たれた彼女は、その感動を一冊の記録にまとめました。200万部を超える大ベストセラーとなった同作は、高度経済成長期の日本人に「まだ見ぬ南海の楽園」への強い憧憬を植え付け、そのままニューカレドニアを象徴する代名詞として定着したのです。