歴代の天皇陛下の中でも、ひときわ深い相撲愛で知られていたのが昭和天皇です。生涯で通算67回もの天覧相撲に足を運ばれ、大相撲への造詣の深さは専門家も舌を巻くほどでした。
昭和天皇は国技館の2階正面に位置する「貴賓席(ロイヤルボックス)」から双眼鏡を手に熱心にご観戦され、取組の決まり手や力士の出身地、過去の対戦成績まで完璧に記憶されていたという逸話が残っています。幕内後半の取組だけでなく、時間が許す限り土俵を見つめ続け、贔屓の力士を作ることなく公平にすべての力士の奮闘を称えられました。昭和天皇のご観戦時には、力士たちも「陛下に恥ずかしい相撲は見せられない」と、立合いの激しさが普段の倍増したと伝えられています。
この皇室に根付く相撲愛は、天皇皇后両陛下、そして長女の愛子さまへと脈々と受け継がれています。2006年、当時4歳だった愛子さまが両陛下とともに国技館を訪れ、初めて大相撲をご観戦された際のエピソードは有名です。愛子さまは力士の四股名や顔写真を事前に覚えられ、土俵上の熱戦に身を乗り出して声援を送られました。その後も成長とともに大相撲への関心を深められ、皇族方が土俵に注がれる温かな眼差しは、土俵の力士や相撲ファンにとって大きな励みとなっています。
両国国技館の貴賓席は、2階正面最前列の中央に位置し、防弾ガラスや独立した貴賓室を備えた特別な空間です。両陛下が席に着かれると同時に場内照明が調整され、館内全体が一瞬で敬意に満ちた静けさに包まれる光景は、天覧相撲でしか味わえない唯一無二の瞬間です。