葬儀や告別式ではブラックフォーマル(準喪服)を着用するのが常識ですが、葬儀を終えた後の自宅弔問において、女性が上下黒の喪服を着ていくことは「かえってマナー違反」とみなされます。大手冠婚葬祭互助会の相談窓口やマナー指導の現場を取材すると、これには明確な2つの心理的・儀礼的理由が存在します。
第1の理由は、「不幸をあらかじめ予想して準備していた」という印象を遺族に与えてしまう古くからの慣習的禁忌です。通夜に駆けつける際も「取り急ぎ駆けつけた」ことを示すために平服が推奨されるのと同様、後日の自宅訪問で完璧な喪服を着て現れる姿は、遺族側に「準備万端で待ち構えていた」かのような違和感を抱かせます。
そして第2の、より本質的な理由は「遺族に過度な精神的・身体的負担(プレッシャー)を与えてしまう」点にあります。葬儀が終わった後の遺族は、慌ただしい日々を終えて深い疲労と悲しみの中にあり、自宅では普段着や部屋着で心身を休めています。そこに訪問客が漆黒の喪服で現れると、遺族は「わざわざ着替えて礼服でもてなさなければ失礼にあたるのではないか」と強い心理的負担を感じてしまいます。
自宅というパーソナルな空間にお邪魔するからこそ、相手の生活の場を尊重し、畏まらせない配慮が不可欠です。したがって、自宅にお線香をあげにいく女性の服装は、喪服ではなく「地味で清潔感のある平服(略喪服)」を選ぶのが鉄則となります。