サムスンがスマートテレビのOSをAndroid TV(Google TV)に明け渡さず、自社製Tizenを堅持し続ける背景には、ハードウェアメーカーとしての強烈な合理性と収益構造が存在します。
第一の理由は、「ハードウェアの完全な主導権」を維持できる点です。OSをGoogleなどのサードパーティに依存すると、UIのレイアウトやホーム画面の広告枠、さらにはリモコンに配置するダイレクトボタンの仕様に至るまで、プラットフォーマーの規約に縛られることになります。自社製Tizenを持つサムスンは、独自の高画質化AIプロセッサ「NQ8 AI Gen3」などのハードウェア能力を100%引き出すカスタム実装を自由に行えます。
第二に、「FAST(無料広告型ストリーミングテレビ)とゲーミング基盤」による莫大なプラットフォーム収益です。Tizen OSには「Samsung TV Plus」という無料の広告付き配信サービスが標準統合されており、世界数億台の稼働テレビから継続的な広告収入を生み出しています。さらに、コンソールゲーム機なしでXbox Cloud GamingやGeForce NOWを遅延なくプレイできる「Samsung Gaming Hub」の存在も、Tizenの軽量・低遅延な描画性能があってこそ実現したものです。
加えて、サムスンは欧州や豪州などを皮切りに、他社製テレビメーカー(Bauhn、Linsar、Sunnyなど)へTizen OSのライセンス供与を展開。さらにスマートテレビ向けに「最大7年間の無料OSアップグレード保証」を打ち出すなど、単一メーカーの枠を超えたグローバルテレビOSとしての覇権を盤石なものにしています。