現場にいた捜索隊員や住民が息を呑んで見守る中、ワニは背中に少年の遺体をしっかりと乗せたまま、約200メートルもの距離を泳ぎ続けました。そして、救助隊の木造ボートからわずか数メートルの位置まで到達すると、遺体を水面に浮かせるようにして手放し、何事もなかったかのように静かに川底へ潜っていったのです。
遺体を引き揚げた救助隊員たちは、その状態を見て言葉を失いました。ワニの口や爪による噛み傷・引き裂き傷は一切なく、遺体は完全に無傷のままだったのです。死因は転落による水死と断定されました。
この一部始終を収めた動画がネット上に公開されると、世界中のメディアが一斉に報道しました。「野生動物が見せた奇跡の慈悲」「川の守り神が家族のもとへ返してくれた」といった感動の声が寄せられる一方で、「捕食行動の一環ではないか」「後で食べるために運んでいただけだ」など、生物学的な見地からの懐疑的な意見も飛び交い、大論争が巻き起こりました。