「京都大学にノーベル賞受賞者が多いのは一体なぜか?」——この問いに対する最大の解は、初代総長・木下広次以来受け継がれてきた「自由の学風」と、実利を急がない基礎研究重視の伝統にあります。
京大の研究室では、指導教員と学生が対等に議論を戦わせる風景が日常です。教員の指示に従うだけの「忠実な弟子」ではなく、教授の仮説に真っ向から異を唱える学生こそが高く評価される風土があります。この徹底した批判的思考(クリティカル・シンキング)と独立心こそが、未踏の領域を切り拓く原動力です。
また、短期的な利益や流行の研究テーマに流されず、「まだ誰も手をつけていない謎」に何年も没頭することを許容する寛容さがあります。本庶佑氏のPD-1分子の発見も、当初からがん治療薬を狙ったものではなく、純粋な分子生物学的疑問からスタートした基礎研究でした。役に立つかどうかも分からない原石を信じて磨き続ける環境が、数十年後に巨大な果実をもたらしています。